不整脈チームの臨床研究

エキシマレーザーシースによるペースメーカーリード抜去術

当院では、植込みデバイスに対するエキシマレーザーシースによるリード抜去術を行っております。

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概要

洞不全症候群や房室ブロックに代表される徐脈性不整脈に対する治療法であるペースメーカー植込みは安全かつ確実な治療法として確立されており、致死性心室性不整脈による心臓突然死の有効な予防法として埋込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator: ICD)の植込みも広く普及しています。さらに最近では、心室内伝導遅延を伴う重症心不全患者に対する心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy: CRT)の植込みも増加しています。これらの心臓植込み型電気デバイス(CIED)は、徐脈性不整脈、頻脈性不整脈、非同期性心臓収縮による心不全の治療に必要ですが、合併症が発生することもあります。植込み手術直後に生じる出血、感染、リード離脱や、経過中に起こるデバイスの誤作動などが挙げられます。中でも頻度は少ないものの、最も対処の難しい副作用は、術後慢性期のデバイス感染症です。デバイスの感染は、感染性心内膜炎という心臓の弁膜を含む心内膜の細菌感染症や、進行した場合は全身に波及する敗血症に至ることもあります。デバイス感染を起こすと、抗生剤治療のみでは治療は難しく、感染源となっているデバイスとリードをすべて摘出する必要があります。しかし、リードは植込まれている年数が長い場合、接している静脈や心臓の壁に癒着を起こし、牽引しても抜けない状態になります。過度の牽引は血管損傷や穿孔といった致命的な合併症を引き起こすリスクがあり、これまでは牽引抜去が困難な場合には開胸手術による摘出が行われていました。しかしながら、開心手術は体への負担が大きく、手術による合併症もあることから、負担の軽い方法でリードを抜去できないかと模索されてきました。これにより、開発されたのがエキシマレーザー(excimer laser)を使用したリード抜去術です。エキシマレーザーシースによるリード抜去は、1997年FDAに認可されて以来、欧米にて急速に普及し高い成功率と安全性が報告されており、我が国においても2008年厚生労働省の認可を受け施行可能となり、2010年より保険適応となりました。

エキシマレーザーは、稀ガスとハロゲンの混合ガス中の励起された2量体(excited dimer)が解離する際生じる紫外線領域のレーザー光です。エキシマレーザーの作用により、生体組織を構成する分子結合を直接切断し、周辺組織に熱損傷を加えることなく病変部を破壊、蒸散させます。
Spectranetics社の開発したエキシマレーザー発生装置(図1)は、塩化キセノンガスを活性媒体とし、波長308nmの紫外線領域のレーザーを発生させます。専用のマルチファイバーカテーテル(図2)を使用して、血管内癒着組織へ接触し、これを破壊・蒸散させることで閉塞した血管を開存させます(図3)。
このように、外科手術による開心術下での抜去と比較して、患者さんへの侵襲が低く、高い安全性が報告されているレーザー抜去ですが、わずかながら血管損傷や血気胸といった重篤な合併症も報告されており、抜去の適応に関しては十分な検討と注意が必要です。現在、当院ではエキシマレーザーによるリード抜去手術を開始しております。

  図1
エキシマレーザー1

 

  図2   図3
エキシマレーザー2 エキシマレーザー3

担当
当院 循環器内科・不整脈外来
荷見映理子、小島敏弥、藤生克仁

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