当院ではCTやMRI、核医学検査(タリウムシンチ、MIBGシンチ、PET)など様々な放射線画像診断による多面的な診断、治療を行っています。特に心臓CT検査に関しては、カテーテル検査に代わる低侵襲の冠動脈評価としての目的のみならず、心臓の機能や性状の評価も可能となってきており、適応範囲の拡がりと共に施行件数の増加も顕著となっています。
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- 放射線画像診断についての更新
- 2019-5-16
当院ではCTやMRI、核医学検査(タリウムシンチ、MIBGシンチ、PET)など様々な放射線画像診断による多面的な診断、治療を行っています。特に心臓CT検査に関しては、カテーテル検査に代わる低侵襲の冠動脈評価としての目的のみならず、心臓の機能や性状の評価も可能となってきており、適応範囲の拡がりと共に施行件数の増加も顕著となっています。
優れた時間分解能と実用に耐えうる空間分解能を非侵襲的に実現する心臓MRIは、心臓の形態的・機能的評価については、一切の放射線被曝を要せず、臨床標準となっています。組織性状評価には十分でない濃度分解能についても、造影という侵襲性を科すことにより、心筋生存性評価が可能となり、各種疾病診断基準に貢献します。また、Velocity mappingは血流量評価における定量性に優れ、様々な臨床場面に応用することができます。
以上の心臓MRIの特性に鑑み、肥大型心筋症、拡張型心筋症、陳旧性心筋梗塞における心室形態や収縮・拡張機能の評価はよい適応であり、先天性心疾患における大血管との連続性情報は有用となります。一方、冠動脈の形態評価については、心臓CTが主役を演じることになります。
これまで多くの論文で、マルチスライスCTによる冠動脈病変の高い検出能について示され、現在、冠動脈造影検査に代わる非侵襲的検査法として欠く事の出来ない重要な検査となっています。マルチスライスCTでの評価は、冠動脈評価に留まらず、心臓の形態や解剖学的評価、その他、心筋の壁運動や壁の性状評価にも使用されるようになり、その検査の適応範囲は徐々に広がってきています。
当院では、2008年より320列CT(Toshiba Aquilion ONETM/Global Standard Edition)が搭載され、徐々に検査件数を増やしており、この数年間は約300-400件/年の検査を行っています。主に、胸痛や心電図異常を認めた症例、左室壁運動異常があり、冠動脈狭窄が疑われる症例、経皮的冠動脈形成術後の冠動脈評価、冠動脈バイパス術後のバイパス血管評価、先天性心疾患の解剖学的評価などを対象に検査を行っています。1回のスキャンで最大16cm幅を撮影が可能である320列CTの特性を生かし、心房細動などの不整脈を有する症例に対しても、積極的に検査を行い、冠動脈の評価や、心房細動症例に対するカテーテルアブレーション治療前の解剖学的評価にも役立てています。昨年の10月より、16cm幅を1回転0.275秒で撮影が可能なAquilion ONETM/VISION Editionに機種が変更され、分解能の向上により更に冠動脈が鮮明に描出され、高い成績で冠動脈狭窄病変やプラークの検出が可能となっています。陽性リモデリングを伴った低CT値プラーク、ring enhanced signが特徴である、不安定プラークを早期に発見し、より早い段階でカテーテル検査・治療を行う事で、急性冠症候群の発症予防を目指しています。
当院では、放射線被曝量を極力低減する為、多くの症例でProspective CTAもしくはTarget CTAによる撮影を行うようにしています。また、逐次近似再構成法(AIDR3D)による画像構築が可能と成り、X線CT検査の画質を保持しつつ、大幅な放射線被曝量を低減する事が可能となっています。検査前にはβ-blockerの内服をして頂き、β-blocker内服下で検査中の心拍数が安定せず高心拍の場合は、β-blockerの静脈注射を加え、心拍の徐拍化を徹底しています。心拍数を抑えることで、half 再構成が可能と成り、又、放射線被曝量の低減にも繋がります。
様々な工夫により放射線被曝量が大幅に低減され、今後更なる検査の適応基準の拡大が期待されます。又、低被曝による検査は、冠動脈CTによる解剖学的評価のみならず、負荷CT心筋血流画像を追加する事も可能と成り、機能的な評価を同時に行う事で、より診断能が向上すると考えられます。今後、更なるデータの蓄積・画像解析を行い、既存のガイドラインよりも、より適切な症例に対し検査が可能となるよう、データを示していきたいと考えています。