肺塞栓症は、静脈を流れてきた塞栓子(血栓、脂肪、空気、腫瘍など)が肺動脈やその分枝を閉塞することにより生じる肺循環障害です。
慢性血栓塞栓性肺高血圧に対するバルーン肺動脈形成術についてはこちらのページをご覧ください
肺塞栓症は、静脈を流れてきた塞栓子(血栓、脂肪、空気、腫瘍など)が肺動脈やその分枝を閉塞することにより生じる肺循環障害です。
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肺塞栓症は突然の胸痛、呼吸困難で発症し、時に喀血を伴います。多くは肥満、長期臥床、外傷、悪性腫瘍、妊娠、経口避妊薬などの使用などをもとに発症しやすいとされています。また現在では長時間の飛行機などで同じ姿勢をとり続けることにおこるエコノミー症候群も肺塞栓症の別名として有名です。多くは下肢の静脈にできた血栓という血の塊が血管の中を流れていき、肺動脈につまってしまうことによりおこります。下肢の静脈に血栓ができるのは別に深部静脈血栓症と名づけられ、これは下肢の静脈うっ滞やむくみを引き起こします。
この肺塞栓症は欧米に多くみられる疾患でしたが、食事の欧米化などに伴いわが国でも急激に頻度が増加しています。重症で救命が困難である症例もあり、早期の診断及び治療が重要であるとされています。
通常、肺塞栓症は急激に発症する急性の経過をたどることが多いですが、少しずつ血栓が肺動脈に詰まっていく慢性肺塞栓症という珍しい疾患もあります。この場合も検査、治療は急性の場合とほぼ同様に行われます。
いくつかの検査を行い、総合的に診断をします。まず動脈からの血液検査にて血液中の酸素濃度が低下しているかを確認し、心電図や胸部X線検査にて他の疾患の可能性がないかみます。肺塞栓症の可能性が考えられれば、胸部CTスキャンにて肺血管に血栓がつまっているかどうかを調べます。また心臓超音波にて心臓への負担を確認したり、肺換気血流シンチグラフィーにて肺の血流が低下している部分を評価します。肺動脈血管造影というカテーテル検査は直接に肺動脈の圧力が計測できたり、また血流の途絶が確認できるので有用です。
個々の重症度にあわせて治療を行います。通常はヘパリンという血液をさらさらにする点滴薬を使用し、血液の塊ができにくい状態にします。また実際にできた血栓をウロキナーゼという薬物によって溶解するのを試みることもあります。ショック状態など重症の場合には外科的に血栓摘除したりカテーテルによって血栓吸引、血栓溶解治療などをこころみることもあります。
また予防的な処置としては、深部静脈血栓症に対して一次的に下大静脈フィルターを入れることがあります。これは下肢の血栓が肺まで流れていかないように、肺までの通り道の途中である下大静脈に留置する網目で、この網目で流れてきた血栓を捕えることができます。通常は足や頚の太い静脈から局所麻酔にて挿入することができます。整形外科などの手術に際して、肺塞栓症のリスクが高いと考えられる場合など手術前後で一時的に下大静脈フィルターを挿入して、肺塞栓症の発症を予防します。