心房細動に対するカテーテルアブレーション

心房細動とは、正常な心臓は安静時には1秒間に約1回のペースで規則正しく収縮していますが,心房細動とはそんなリズミカルな拍動が失われる代表的な不整脈(心臓に生じる異常なリズム)です。
下は心房細動の方の心電図です。針の様な波形が心臓の脈を表しますが、この間隔がバラバラになってしまっています。

脈拍のグラフ

症状

脈が速くなる場合と、遅くなる場合があります。早くなる場合には、動悸、息苦しさ、胸の不快感などが突然現れます。この症状が数秒のこともあれば、数時間から数日持続することもあります。

また、中には全く無症状で健康診断の心電図で初めて指摘される場合があります。症状のあり、なしに関わらず、治療が必要なことがあります。遅くなる場合には、失神や意識消失、くらっとする感じなどが出現する場合があります。

治療

心房細動の治療

次に心房細動の治療の話に移ります。心房細動は糖尿病や高血圧やさまざまな心臓病を背景に生じることが多いとされます。ですから,こうした要素がある場合は心房細動より先にもともとの原因を治療するのが前提です。背景疾患をケアした上で心房細動に対する治療を考える場合には,次の3つがあります。

1)抗血栓療法
2)不整脈薬を用いた治療(薬物療法)
3)薬物を用いない治療(カテーテルアブレーション,ペースメーカーなど)

■抗血栓療法

これは血液を固まりにくくする薬物を用いて心臓の中で血栓が作られるのを予防しようとする治療です。心房細動になった患者さんのうち,心房細動が長期間持続している持続慢性心房細動や,時々しか心房細動にならない人(発作性心房細動)でも脳梗塞などの塞栓症を発症しやすい因子(心不全,高血圧,高齢,糖尿病,脳卒中の既往,冠動脈疾患など)を複数有する方では抗血栓療法を行う必要があります。抗血栓療法としては古くからワルファリンという薬の有効性が示されており,近年ではワルファリンと同等かそれ以上の効果を示す新薬も使われるようになっています(抵凝固療法)。一方,何らかの要因(出血リスクなど)で抗凝固療法が行えない患者さんに対しては,アスピリンをはじめとする抗血小板薬が用いられることもあります。

■薬物療法

抗血栓療法以外に心房細動で生じる動悸(心悸亢進)や先に述べた心不全の予防のために薬で治療が行われることがあり,主に不整脈薬というグループの薬物が用いられます。これらは心房細動になっても心拍数があまり早くならないようにしたり(レート・コントロール),またそもそも発作的に生じる心房細動自体を起こさなくしようとする予防治療薬(リズム・コントロール)が用いられます。

不整脈薬には多数の種類がありますが,その効果は実は完全ではありません。つまり薬を服用していても十分に心房細動の勢いをコントロールできないことが知られています。心房細動にはもともと薬が効きづらく,また,一時的には心房細動を抑えるのに有効であっても,時間経過とともにその効果が弱まってしまう現象も知られています。また,不整脈薬には心臓および全身に副作用を生じやすい傾向もあり,医師の慎重な経過観察の下に使用する必要があります。

■心房細動アブレーション(カテーテルアブレーション)

心房細動のアブレーション

不整脈薬を中心とする薬を用いない心房細動の治療として最近,カテーテルを用いて心房細動が生じないように心房筋に熱を与えて焼灼(しょうしゃく)してしまおうという治療が行われるようになってきました(カテーテルアブレーション)。

心房細動のメカニズムは現在でも十分に解明されているとはいえませんが、最近になって、肺静脈付近から異常な命令が頻回に出ることによって心房細動が生じていることが多いことが分かってきました。カテーテルアブレーションにより、肺静脈の周囲を焼灼して(肺静脈隔離)、心房細動を根治できる場合があります。当科では症状が強く、薬物によるコントロールが困難な患者様に対して、この治療法を行っております。当院では、3次元CTと3次元マッピング装置(CARTO)を組み合わせた方法で、心房細動に対するカテーテルアブレーション治療を行っております。

施設や方法によって差はありますが,発作性心房細動であれば1回の治療で70~80%,心房細動が再発してしまっても2回目までの治療を行うことで80~90%近い成功率で行えるようになりつつあります。また,慢性心房細動であっても全例ではありませんがカテーテルアブレーションが有効な場合がありますアブレーション前日に入院し、採血、レントゲン、心電図、および経食道心エコー(胃カメラの様な心臓超音波装置にて心臓の中に血栓ができていないことをチェックします。
カテーテルアブレーションは静脈麻酔(点滴による麻酔)を使用して、眠っていただいている間に治療を行っています。
足の付け根から、右の図のように、心臓にカテーテルを挿入して、心房細動の原因となる部位を焼くことで治療します。約3時間程度で終了します。
アブレーション後、すぐに目が覚め、その後4時間すると歩行も可能になるなど患者さんへの負担も軽い治療です。

しかしながら,心臓の中に長時間カテーテルを挿入する手技でもあり,脳梗塞や心タンポナーデや食道損傷などの合併症も非常に少ないながら知られています。一部の高度施設で専門家たちにしか行えず広く普及する治療にはなっていないのが現状ですが,当院は施行可能な施設で、合併症最小限に抑えることに努めています。
心房細動のアブレーションについてのご質問なども心房細動・不整脈専門外来で行っております。

 

心臓3次元CTとCARTOシステムを併用した心房細動の治療
(左心房、左心耳と4本の肺静脈)
PVI1 PVI2
心腔内エコーを用いた心房細動の治療
(特に腎機能障害例に有用と考えられます)
PVI3 PVI4

 

■ペースメーカー

一般的には,脈拍が速くなるのが特徴でしたが,心房細動が長期間持続していると心臓にガタがきて逆に心拍数が遅くなってしまう場合があり,そのような場合には最低限の心拍数を確保してくれる心臓ペースメーカーが必要になります。
また,発作性心房細動の一部の方は,脈拍が遅くなる別の不整脈(洞不全症候群)を合併していることもあり,めまいやふらつきなどの症状がある場合にはペースメーカーの適用となることがあります。一般的にはペースメーカー単独では心房細動への治療にはなりませんが,一部では心臓をうまくペーシングして心房細動の発生を予防することを目指すプログラムが内蔵された機種も発売されています。

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