心臓リハビリテーション

はじめに

心筋梗塞などの虚血性心疾患、心臓手術後の方は、心臓の機能が低下していることが多く、また入院中に安静を必要としたことにより体力も低下しています。そのため退院してすぐには元の活動ができないことも多く、不安にもなります。社会復帰の前に体力を安全に回復し、自信をつけることが必要です。
虚血性心疾患の主な原因は、心臓に酸素や栄養を送る血管である冠動脈の動脈硬化であり、再発予防のためには動脈硬化の進行を防ぐ必要があります。そのためには食事療法や禁煙の他に、運動療法が有効であることが知られています。
心臓病の方が、体力を回復し自信をつけ社会に復帰し、また再発を予防することが心臓リハビリテーションの主な目的です。

心臓リハビリテーションの役割図解

心臓リハビリテーションの効果

心臓リハビリにより以下のようにいろいろな面において、改善する効果があります。
 ・より高いレベルの運動ができるようになり、運動中の酸素摂取量も増大します。
 ・安静時や運動中の心拍数を減少させます。
 ・運動中の息切れを改善させます。
 ・心筋虚血の出現、症状を改善させます。
 ・副交感神経活性を亢進させ、交感神経活性を減弱します。
 ・血管拡張能を改善させ、血圧を低下し、動脈硬化の進展を抑制します。
 ・活動筋の筋肉量、筋力を高め、筋のミトコンドリア活性などを増加します。
 ・脂質代謝、糖代謝を改善(インスリン感受性の改善)させ、肥満の改善など、冠危険因子を改善します。
 ・禁煙指導により、喫煙率を減少します。
 ・抑うつ状態から改善させ、心理社会的満足度を改善し、ストレスを低下させます。
 ・死亡率を低下させ、虚血性心疾患の再発を抑制します。
 ・抗炎症作用があります。
 ・不整脈の抑制作用があります。

リハビリテーション・プログラム

急性心筋梗塞発症や心臓手術日から1~2週間を急性期リハビリといいます。この期間は入院中のため、洗面、排便、シャワー浴、廊下歩行などの動作が行えることが目標です。急性期の治療とともに、段階的にリハビリの負荷量を増やしていきます。
その後から2~3か月間は回復期リハビリといいます。この期間は、退院して社会復帰することが目標です。運動負荷試験などの心機能検査、積極的な運動療法を行います。
発病後2~3か月以後の期間は維持期リハビリといい、病院および運動施設で運動療法を継続します。

運動処方

運動療法を安全かつ効果的に行うために、最も適した運動強度などを決めることを運動処方といいます。運動の種類、強度、時間、頻度などを決めます。
運動の種類は、心臓病の場合、ウォーキング、自転車こぎ、上腕自転車こぎなどが勧められます。運動強度は最大能力の40~60%が目標ですが、その目安として運動中の心拍数を用います。他に目安として自覚症状を参考とし、ややきついと感じる強さが適当です。運動の時間は、20分から60分が適切です。また運動の頻度は、1週間に3回から5回が適切とされています。
また従来のウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動以外にレジスタンストレーニングが最近重要視されています。レジスタンス運動としてレッグエクステンション、レッグカール、上腕の伸展と屈曲などを行います。このようなレジスタンス運動により筋力がつくと、運動時に心臓に対する負担が軽減されるという効果があります。

自転車こぎ運動とレジスタンス運動をする光景

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