心血管疾患の病態と密接に関わる低酸素ストレスへの応答を細胞から個体レベルで解析し、循環器臨床へ結びつける研究を行っています
心血管疾患の病態と密接に関わる低酸素ストレスへの応答を細胞から個体レベルで解析し、循環器臨床へ結びつける研究を行っています
心臓は毎日約10万回収縮と拡張を繰り返しており、単位重量当たり体内で最も多くのエネルギー(アデノシン三リン酸、ATP)を消費しています。ATPは主にミトコンドリアで産生されますが、この過程で大量の酸素を必要とします。心臓の重量は体重の0.4-0.5%に過ぎませんが、実は全身の約10%もの酸素を消費しています。従って正常な心臓の機能を維持する為には適切な酸素供給が欠かせません。
組織への酸素は血流に乗った赤血球上のヘモグロビンによって供給されます。機能的な血管網を構築することは組織への酸素供給を維持するために重要な役割を果たしています。このように心機能を正常に維持する為には、心筋組織への酸素供給と、心筋細胞、間質細胞の酸素消費のバランスを保持することが必須になります。虚血性心疾患だけでなく、心肥大、心不全、頻脈性不整脈などの病態では心筋組織への灌流が相対的に低下し、低酸素環境が惹起されていると考えられます。このような低酸素ストレス環境において、心筋組織の細胞はただ傷害を受けるだけでなく、それぞれ特異的な低酸素応答を呈することが知られています。これら低酸素応答機構の中には、心機能維持において保護的なものもあれば、心不全を増悪させるものもあると思われます。私達はこれら低酸素応答機構を詳細に解明することで、将来の心血管疾患治療への新しいアプローチを構築したいと考えています。